6
「何もお前が知らないなんてね。」
相変わらず不機嫌そうに女の子がいう。
「しょうがないよ、。。。」
悲しい顔で男の子がそう答えた。
「そうか、やはりな、お前か、ミフユ。」
錬三郎は後ろをむいて話した。
森の影からすうっと着物を着た美しい女性が現れる。年は20代後半くらいであろうか、
「相変わらずだね、レンお前の姿は昔とかわらないね。私は少し年をとったかな。」
少し笑みをこぼしながら、女はしゃべる。
「やれやれ、いたずらが過ぎるぞ、ミフユ。どうしてお前がここにおるのじゃ、
あんな、手の込んだいたずらもしよって。何か恨みでもあるのかわしに。」
少し強い口調になる錬三郎。
「恨みならあるさ、約束も忘れたのかい?流石に年月が流れすぎたか。」
下をうつむきミフユはつぶやいた。
7
「社長!!。」
渥人と、妖子は社長と湯元のいる部屋にはいってきた。
「ハア・ハア。犯人がわかりました。」
ものすごい勢いで探して回ったのか、息を切らしている。
「そうか、美冬半人だな。」
社長が言う。
「あの話は本当だったのだな。」
社長がつぶやく。続けてはなしはじめた。
「昔菱野に『おつぼ』という女がいた。今の宇坪入(うつぼいり)地籍を開墾(かいこん)したが水がなくて困った。そのためそこへ堰(せき)を作ってみたが水が流れてこない。そこで『おつぼ』は堰の上流にある大きな石に登って水が湧くことを願いながら[しこ]を踏んだ。すると不思議なことに、その石の下から水が湧き出してその辺を灌漑(かんがい〈人工的に水を送ること〉)することができた。
その後数年かたって開墾が進んで、耕地が増えたため水量がたりなくなった。
そこで後世の村人達がその堰の下の方へ横堰というのを作って、この堰を切り落としその上他の水源地からも、水を引いてこれに加えた。しかし、この女の功績を忘れないためにと、新しい堰を『女堰(おんなせき)』と名づけて呼んだので『おつぼ』の開いた堰は『古堰』と呼ぶようになった。
しかし、『おつぼ』の霊はこれを喜ばないのであろうか。四月二十六日、二十七日の女堰の堰ざらいの当夜には、『おつぼ』の霊が提灯(ちょうちん)を古堰の見回りをする。
という言い伝えがある。」
「ちょうど100年前、水が堰から流れなくなったそうだ。そのとき雲の助城にある『問答石霊声』から、『古堰へ矢留ノ城ノ少年ヲ奉ゲバ水ハ流ル』、というお告げがきこえてきた。」
まさか。。。皆がそう思った。
「その少年が大おじさん。花岡錬三郎だ。」
妖子が恐るおそる聞く
「今二人はどこに?」
社長が答える
「おそらく『古堰』だろう。私も行かねば。あの地図が古堰を納めるものではなかったのか。」
そお言うと隆士は部屋を出て行った。
「宝って宝の地図だったんだ。」
呆然としていた3人だったが、あわてて隆士の後を追いかけた。
8
「怖い。。。」
妖子が渥人にしがみついた。
「意外と女の子なんだね。弱点みっけ!!」
嬉しそうに渥人が言う。
「静かにしないか。あそこに社長がいる。」
湯元は二人を静かに叱りつけ奥の方を指さした。
隆士が見てる方角で、錬三郎と着物をきた女性が話をしている。
9
「約束か、約束を果たすためにここにきたのじゃ。」
真剣な眼差しで錬三郎は美冬に言った。
「わかっていたよ。そこの子供達から聞いていたからね、だから待っていたんだ。」
座敷童子をみながら美冬が話す。
「そうか、そうか知っておったか『おつぼ』に会いにきたんじゃ」
そう錬三郎が話した瞬間森の中が急に明るくなった、
あちこちで真っ赤な光を発している。
「うわ!」
「何これ!」
渥人と妖子は驚いた。
「これが、矢留の城の篝火。そうか錬三郎おじさんはこのために。。」
隆士はいう。
「おうおう。相も変わらず威勢がいいのう!やはりな、わかった。3ヵ月後にまた会おうぞ、『おつぼ』よ!」
錬三郎がそう叫ぶと辺りの光はなくなり。嘘のようにまた暗闇が広がった。
「約束はそれだけか。覚えていないのか?私との約束。。。」
震えながら、美冬は言った。
「すまんかったな。。約束の物はもうもっておるじゃないか。美冬」
2011/04/03